TOPPING D30レビュー
2016年10月03日 公開

2年間USB DACとして使ってきたifi nano iDSDの調子が悪くなってきたのでDACを新調しました。
今回購入したのはアンプと同じメーカーのTOPPINGのD30というDACです。同一メーカーのほうが相性良いだろうという考えからだったのですが、いかんせん発売から間もないからなのか、ネット上にはD30の情報がほとんどありません。海のものとも山のものともつかないまま、それでも一か八か人柱覚悟で購入してみました。
結果的には大変満足のいく製品だったので良かったのですが、家に届いてから実際に音が出るまでにすったもんだがあり大変な思いをさせられました。
先代のD20の評価がとても高かっただけに、後継機であるD30がどんなものか気になってる人は大勢いると思います。この記事がそんな人たちの一助になれば幸いです。

まずはスペックから。
詳しいことはTOPPINGのサイトで確認してもらうとして、主なところとしては心臓部であるDACチップにシーラスのCS4398を採用、DSD128および24ビット/ 192kHzに対応しました。先代がDSD非対応、24ビット/96kHzまでだったので正常進化といったところです。これで当面は対応フォーマットで困ることはないでしょう。

入力はUSB、同軸、光、出力はRCAといたって普通。電源はACアダプターになります。

フロントパネルは電源と入力切替のトグルがあるのみ。D30は純粋なDACなのでヘッドホンアンプなどの機能はありません。余計なものにコストが掛かってないのでその分音質に期待できる?と思います。
ヘアライン仕上げのアルミに覆われた筐体は質感が高く安っぽさはありません。トグルスイッチもしっかりとした手ごたえがあり作りもよさそうです。フロントパネルのデザインが他のTOPPING製品と共通なので、TOPPINGで揃えると見栄えがいいです。惜しむらくは幅を統一してほしかったですが・・・(゚_゚i)タラー・・・

さて、現在国内で入手するにはAmazonに出品しているところから購入するしかないようで、そこに出品しているのは中国の企業です。製品も中国から発送されるので、到着には時間が掛かります。おじさんの場合、購入から到着まで6日掛かりました。むかし米国からDVDを買っていた時もこのくらいだったので、まあ標準的なところでしょうか。なお、中国の企業だからといて心配は無用です。ちゃんと日本語も通じるし、送られきた製品もきれいなものでした。ちなみに価格は14,950円です。

ビニール袋を開けると紙袋が。内側にプチプチが貼られたもので一応気は使ってますね。

本体が入った箱はシンプルです。まあ箱なんてどうでもいいんですけどね。中身をちゃんと保護しててくれればいいわけで、見た目なんて気にしません。

中はしっかりとクッション材で保護されています。

中身は、本体、ACアダプター、USBケーブル、USBメモリー(ドライバー)、保証書。

意外なことに保証書には中国語と英語のほかに日本語の欄もありました。日本への輸出を意識しているようです。

ACアダプターは小型のものです。

ドライバーが入ったUSBメモリー。容量は2GBでメーカー名がプリントされています。しかしこのUSBメモリー、なんと中に入っていたファイルが壊れていて読むことができませんでした。ドライバーの他に取説のPDFと、ドライバーのインストール方法やプレイヤーの設定方法の動画が入っていたのですが、それらもすべて壊れていました。他はともかく、ドライバーが壊れていては話になりません。それがなければ動かすことができないのですから致命的です。元々壊れていたファイルをコピーしたのか、輸送中に何らかのアクシデントで壊れたのかはわかりませんが、こんな事ってあるんでしょうか。
そこで何とかしなければとAmazonの商品ページを見たところ、ドライバーがインストールできない場合はこちらからファイルをダウンロードしてくださいという記述を発見。早速そのURLへアクセス・・・・・・が、なんとアクセス制限が掛かっていてページを開けない(TmT)ウゥゥ・・・どういうことだってばよ?
やむなく出品者へ制限を解除するようメール。合わせてメーカーにもドライバーを送ってほしい旨連絡しました。それにしても何なんでしょうねこの詰めの甘さは、メーカーもこういった場合に備え、サイトにドライバーを置いといてくれたらいいのにそれすらないとは。
で結局どうなったかというと、悠長に待ってるのは性に合わないので自力で何とかしようと色々調べました。その結果XMOS社が提供する汎用ドライバーがあるのを発見しました。後でわかったことですが、そもそもⅮ30は専用のドライバーではなく、このXMOS社のドライバーを採用していたのです。しかもD30付属のドライバーは1年以上も前の古いバージョンだったので、今回見つけた最新のドライバーで正解だったのです。
一時はどうなるかと思いましたがなんとか事なきを得、ようやく音出しへと。果たしてどんな音を聴かせてくれるのやら。

環境
PC 自作
OS Win10 64bit PRO
CPU Core-i7 2600K
RAM 16GB
USB DAC TOPPING D30
アンプ TOPPING VX1
スピーカー ELAC B72
プレイヤー foobar2000
ソース WAV(CDリッピング)
比較対象はVX1内蔵のDACです。
D30の音を一言で表すなら繊細でクリアー。解像度が高く小さな音も漏らさずくっきりと再生してきます。個々の音が埋もれることなくしっかり分離しながらも、全体の調和が崩れることなくよく整えられています。低音は控えめながら引き締まって瞬発力があります。中高音は暖かく伸びやかで抜群の解放感がります。
VX1との比較では音の輪郭の違いが顕著に表れます。VX1の音は荒くざらついた輪郭をしているのですが、D30では細く滑らかです。VX1を麻布とするならD30は絹といったところです。


ジェイク・シマブクロのアルバムではその違いが顕著に表れます。D30では弦の響きがシャープで透明感があり繊細な音の変化を巧みに表現します。さらに1音1音の残響がなだらかに減衰していく様は何とも言えない余韻があります。VX1ではこれが固く濁った音に聴こえます。音の輪郭線が太く全体的に大味です。低音は出ているものの潰れ気味で解像度が低いために籠ったように聞こえます。
とみたゆう子のアルバムでは、彼女の済んだ歌声が高域まで綺麗に伸びていきます。悲しげで憂いのある彼女の声が情感たっぷりに表現されます。特に〈シベールの日曜日〉は悶絶ものに最高で、一度D30で聴いたらもうVX1で聴く気にはにはなれません。


一方、ロックになると状況は変わってきます。D30の繊細さが仇となり、ロックの荒々しさが出ていません。妙に小ぎれいで迫力が無いのです。低音も不足気味で腰高な印象です。むしろこういうのはVX1の無骨さが合っていてグイグイ押してくる感じが心地いいです。
総じてD30はポップスやアコースティックなどおとなしめな音楽との相性が良く、ロックのような派手な音は苦手なようです。もっとも組み合わせるアンプやスピーカとの関係もあるので、あくまでもおじさんの環境ではということですが。
というのが初期の感想だったんですが、その考えを改めなければならないことになりました。
エージングが50時間程進んだ頃でしょうか、がぜん低音が出るようになり腰の据わった力強い音に変わったのです。輪郭はよりはっきりとし音の密度が上がったように感じられます。苦手だったロックも以前に比べ大分聴けるようになりました。
正直、DACがエージングで変わるといは思っていませんでした。アンプやスピーカーならいざ知らず、DACにエージングが必要だとは聞いたことがなかったのです。しかし実際に音の変化を目の当たりにするとエージングで変わることを認めないわけにはいきません。まったくオーディオは奥深いです。
とはいえいくらエージングでよくなったからといって、ロックではVX1にはあと一歩及ばずというところです。そこでふとした思い付きだったのですが、Foobar2000でリアルタイムDSD変換をしたらどうなるだろうと試してみました。いやもうびっくりです。ここまで変わるのかというのが正直な感想です。エージングで出るようになった低音が更に力強くなったのです。しかもD30の持ち味である解像感そのままに切れのある低音が出るのです。音域全体も引き締まり今まで以上に音に奥行きが感じられます。VX1にあと一歩だったロックはもう引けを感じません。全てにおいてVX1を凌駕しています。
ここまでくるとVX1のアンプとしての能力がむしろD30の足を引っ張ってるのでは感じ始めてます。この組み合わせではD30が役不足な気がします。もうちょっと良いアンプを考えたほうがいいかもしれません。
昨今USB DACの内蔵が当たり前になってきたアンプにおいて、単機能のDACがどれほどの意味を成すのか難しいところです。愛好家ならいざ知らず一般には需要が見込めないのではないでしょうか。そもそも高いアンプならUSBDAC内臓で音がいいのがいくらでもありますしね。
しかし間違いなくこのD30はいい音を出します。上を見たらきりがないですが、これは約15,000円のDACです。この値段でこれだけの音が出れば十分だと思います。場所も取りませんしコンパクトにまとめたいという人にはこれからの選択肢としてお勧めします。
