IK Multimedia iLoud MTMレビュー
2022年01月04日 公開

昨年12月にスピーカーをIK MultimediaのiLoud MTMに替えました。これはアンプを内蔵したモニタースピーカーといわれるもので、B&WやJBLといった有名どころのパッシブスピーカーとは用途の異なるスピーカーです。主にDTMやミキシングといった音楽制作で使われていて、色付の無いフラットな特性でモニタリング用に使われています。
モニタースピーカーをリスニング用に使うにはどうかとは思ったものの、ネットのレビューによるサイズを越えた低音とフラットな特性、そしてDSPのコントロールによって設置環境に合わせて音を補正するという、何とも魅力的な機能に興味を惹かれ導入に至りました。

購入はAmazonからで、価格はペアで7万2千円程。通常は10万円近くするのですが最近のAmazonでは度々安くなるので、そのタイミングを見て購入しました。サイズは幅130ミリとかなり小さめで、PCの隣に置くにはもってこいのサイズです。

奥行きは160ミリ、高さは284ミリ、重量2.5Kgと実にコンパクトです。スマホと比べてもそのコンパクトさが分かると思います。

スピーカーにアンプが内蔵されているので、パワーアンプは必要なく、DACの音声出力から直接ケーブルを繋ぎます。使用するDACはTOPPINGのD30PROです。



TSRって聞きなれない名前ですが、ようはヘッドホンに使われているフォン端子のことです。
ちなみケーブルは既製品だと高いので自作しました。使用した機材はXLR、TRSともノイトリックのNC3FXX-BAG、NP3X-B、ケーブルがオヤイデのQAC-222です。総額で4,774と既成品の半額くらいでできました。

売りはDSPによる自動音場処理ですが、手動による調整も可能です。といっても調整範囲はそれほど広くはないので、メインはDSPとなります。

さて肝心の音ですが、評価はあくまでもニアフィールドで使うという前提での感想です。本スピーカーもそういった立ち位置の製品なのですから、そこを踏まえたうえで読んでください。
箱だし直後の何もいじってない状態では、1kHz前後の帯域が歪んでるような、人の声が変な音に聴こえます。裏のスイッチで高域を-2dBにしてやると大分ましになりましたが、全体的に違和感があります。この時点でやっちまったかなとかなり焦りましたが、売りであるDSPを試さないうちはまだ分からないだろうと、気を取り直してDSPを試してみることに。
まずは付属のマイクを使ってキャリブレーション開始。作業はあっという間に終了。超簡単で拍子抜けするほどです。
再度試聴。
さっきとは別物といっていいくらい激変しました。歪みは全くなくクリアで見通しのいい音になりました。低音もサイズからは信じられない量感と再生能力で、深く沈み込みながらも明瞭で各楽器の描き分けが素晴らしいです。中高音に至っても音の混濁が無く、細かな音まで分離が秀逸で位置関係もよくわかります。音の輪郭が明瞭で粒立ちがいいとはまさにこのことでしょう。音場はそれほど広くはないですが、定位がよく全域にわたって癖のない音です。
正直、これまでフラットな音というのを聴いたことが無いので、フラットがどういうものか分かりませんが、このMTMの音を聴くと、なるほどフラットというのはこういうことかと納得させられる思いです。
以前はELACのBS72を使っていましたが、その時に籠って聴こえたソースがMTMでかなりクリアで抜けが良くなりました。BS72も決して悪くないスピーカーでしたが、MTMの音を聴いた後では物足りなさを感じてしまいます。
と、ここまで褒めてきましたが、欠点が無いかというとそうでもありません。といってもあくまでも好みの問題なのですが、人の声に艶がないのです。ここがモニタースピーカーたる所なのでしょうが、パッシブスピーカーのように個性がないのです。そこが物足りなさを感じるところではあるのですが、まあこれはないものねだりということなのでしょう。
ただ、これも暫く聴いていると馴染んでくるもので、この素晴らしい音の前には少しの不満など取るに足らない事と割り切れるようになりました。
万人にお勧めできるスピーカーではありませんが、アンプ込みで7万ちょっとと考えると、これはこれでコストパフォーマンスがずば抜けたスピーカーです。パッシブスピーカーとは一線を画す世界に興味があるなら、検討の価値は十分にあると思います。