先ずは基本スペックから
型番 BS72
形式 2ウェイ・バスレフ
ユニット 25mmシルク・ドーム×1、116mmCONE×1
能率 86dB/2.83V/1m
インピーダンス 4Ω(最低保証3.6Ω/200Hz)
周波数特性 56-28kHz
クロスオーバー周波数 3,600Hz
入力 40W(定格)/60W(最大)
サイズ H230×W140×D160mm
重量 3.2kg(台)
仕上げ サテン・ブラック
価格 ¥65,000/PAIR (税別)
ちなみに比較対象としてこれまで使っていたKENWOODのスピーカーのスペック
型番 LS-K703
形式 2ウェイ2スピーカー/バスレフ型
インピーダンス 6Ω
最大入力 60W
ツィーター 1.9cmソフトドーム型×1
ウーファー 11cmコーン型×1
クロスオーバー周波数 2kHz
再生周波数範囲 50~100kHz
出力音圧レベル 83dB
最大外形寸法(約) 140(W)×240(H)×239(D)mm(グリル含む)
質量(約) 3.1kg(1本)
希望小売価格20,000円(税抜き)
価格差で3倍以上の開きがあるものを比較すること自体どうかと思いますが、対象がこれしかないので参考程度に考えてください。
価格以外での大きな違いは再生周波数です。ELACの56-28kHzに対しKENWOODは50~100kHzと広い周波数特性を持っています。数値だけ見るとLS-K703の方が優れているように見えますが、オーディオの世界では数値などあまりあてになりませんからねえ。

サイズは奥行き以外ほぼ同じ。

容積が大きい分LS-K703の方が低音の再生には有利。

全体的にそうなんですが端子を含め作りは価格がそのまま反映されたものです。

サランネットを外したところ。

バスレフポートは背面。バイアンプには対応してません。

再生環境
PC 自作 Win7 32bit Pro
USB DAC ifI nano iDSD
アンプ TOPPING VX1
プレイヤー foobar2000
音質さて、ここからは肝心の音質についてです。なお、レビューはニアフィールドを前提としています。
美音、一言で表現するならこれが最も適切な言葉だと思います。低音はこのサイズのエンクロージャーからよくもこれだけ出るものだと感心しますし、澄み切った高音は上まで気持ちよく伸びています。しかしこのスピーカーを際立たせているのは低音でも高音でもなく中音にあります。特にボーカルは素晴らしいの一言でLS-K703では決して味わえない響きとなっています。
LS-K703を表現するなら、元気が良く鳴りっぷりのいいスピーカーという感じでしょうか。クラシックなどの大編成はサイズの問題もありさすがに無理がありますが、それ以外はそつなくこなす優等生的な感じです。あまり音質の良くないソースでもそれなりに聴かせてくれるので、ながら聴きや音にあまりこだわらないひとには適当なスピーカーだと思います。ただし欠点が無いわけではありません。低音は無理に伸ばしている感が否めなく、ソースによってはしつこく嫌味に聴こえる場合があります。また特定の周波数が強調される傾向があるようで、具体的な例としてはONEOK ROCKのC.h.a.o.s.m.y.t.h.という曲があるのですが、この曲は冒頭からギターの音がずっとLchから出ているのですが、このギターの音が前に出すぎてとても耳障に聴こえます。イヤホンで聴くと全くそんなことは無くボーカルの奥に位置しバランス良く聴こえるのでスピーカーの癖だということが分かります。
対してBS72はバランスに優れ低音に力みがありません。解像度も高く音が混濁することもないですし苦手とするソースもありません。全体的に腰の座った力強い音で聴き疲れしません。そして特にボーカルの表現力が素晴らしくサラ・オレインの甘く透き通る歌声はトロケルような響きです。この音を聴いてしまうとLS-K703がひどく安っぽいものに思えてくるくらいです。いや勿論価格からいってLS-K703はCPに優れたスピーカーです。しかしBS72との価格差はどうにもならない音の違いとなって表れているわけです。というかむしろそうでなくては困るわけですけどね。
ハイレゾ再生 ソースはハイレゾ配信サイトのサンプル曲でFLAC 24bit 96kHzです。
これまでLS-K703でのハイレゾ再生は正直言ってイヤホンのATH-IM03ほどの違いを感じませんでした。周波数特性からいって十分ハイレゾに対応しているのですが、やはり癖というか味付けというかLS-K703の目指している方向性がピュアオーディオとは一線を画してるのかなといういう感じです。どんなソースもそつなくこなす、これがコンセプトになっているのかと思うのですが、そのせいでソースによる違いがあまり出にくくなってる感じがします。
BS72は録音の悪いソースはもろに悪くしか聴こえませんが、反面良いものはホントに素晴らしい音を聴かせます。ハイレゾでは再生周波数こそ対応していませんが、CD音源との違いは歴然でその密度の濃い生々しい歌声は目の前で歌っているかのような錯覚を覚えさせます。
そもそも20kHzから上の音は人の耳には聞こえないわけで、ハイレゾといっていくら上の周波数を伸ばしても意味が無く、むしろ量子化ビット数を上げる方が重要だともいわれています。かくいうおじさんも老化で高い音なんてあまりよく聞こえません。なのでLS-K703の100kHzなんて全く意味がないのです。
まとめ総じて、何でもそつなくこなすがそれゆえにこれといった個性が薄いLS-K703。ソースに忠実で色付けが少ない分音源の善し悪しがはっきり表れるが、そのリアルで甘美なボーカルが魅力のBS72といったところでしょうか。
BS72もLS-K703同様小型スピーカーなので広いリビングなどでフルオーケストラを聴くのには向きませんが、PCオーディオでのニアフィールド環境では抜群の威力を発揮します。設置スペースも取りませんしこれからPCオーディオを始めようとしている人には有力な候補となるのではないかと思います。小型でここまで良い音のスピーカーはそうそうあるものではありません。おじさんもこのBS72に出会うまでは1年間悩みましたがこれを買って本当に良かったと思います。
-- 続きを閉じる --